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Audible感想『和菓子のアン』|和菓子の奥深さと主人公の成長を楽しむ物語

audible感想

はじめに|「餡子好き」には気になるタイトル

今回Audibleで聴いたのは、坂木司さんの『和菓子のアン』です。

以前からタイトルは知っていた作品ですが、「和菓子」という言葉が入っているだけで、餡子好きの私としては少し気になっていました。

和菓子をテーマにした物語と聞くと、老舗の和菓子店を舞台にした職人の話なのかな、と最初は想像していました。

しかし、実際に聴いてみると少し違います。

舞台となるのはデパ地下にある和菓子屋「みつ屋」。

そこでアルバイトを始めた主人公・梅本杏子が、和菓子や仕事、そしてさまざまな人との出会いを通して少しずつ成長していく物語です。

大きな事件が次々と起こるわけではありません。

日常の中にあるちょっとした疑問や出来事を、和菓子にまつわる知識や人間関係から解き明かしていく。そんな穏やかな日常ミステリーとして楽しめる作品でした。

そして何より、物語の中に登場する和菓子がおいしそうです。

聴いているだけなのに、

「これは食べてみたい」

「実際にはどんな形をしているのだろう?」

と、何度も想像してしまいました。

気がつけば『和菓子のアン』だけでは終わらず、Audibleで配信されているシリーズ作品『アンと青春』『アンと愛情』まで続けて聴いていました。

今回は、そんな『和菓子のアン』シリーズを聴いて感じたことを書いてみたいと思います。

デパ地下の和菓子屋「みつ屋」で始まる物語

主人公は梅本杏子。

高校を卒業した杏子は、進学にも就職にもあまり積極的になれずにいました。

将来何をしたいのか。

どんな仕事に就きたいのか。

はっきりとした目標があるわけでもありません。

そんな杏子が選んだのが、デパ地下にある和菓子屋「みつ屋」でのアルバイトです。

自分自身に対するコンプレックスもあり、比較的それを意識せずに働けそうだと思ったことが、和菓子屋を選ぶきっかけの一つになります。

最初から「和菓子が大好きだから和菓子屋で働きたい」という主人公ではないところが、この作品のおもしろいところだと思いました。

夢を持った主人公が、その夢に向かって突き進んでいく物語ではありません。

むしろ、

「自分が何をしたいのか分からない」

というところから始まります。

こうした感覚は、特別なものではないと思います。

学生時代から明確な目標を持ち、そのまま希望する仕事に進める人ばかりではありません。

何となく選んだ学校。

何となく選んだ仕事。

そこで出会った人や経験によって、少しずつ興味のあることを見つけていく。

杏子の姿には、そんな現実的な成長の形が描かれているように感じました。

「なんとなく始めた仕事」が変わっていく

杏子にとって、最初の「みつ屋」での仕事はあくまでもアルバイトです。

しかし、働いているうちに和菓子のことを少しずつ知るようになります。

和菓子の名前。

材料。

季節との関係。

行事との関係。

そして、そこに込められている意味。

最初は知らなかったことが一つずつ分かるようになり、それに伴って杏子自身も和菓子に興味を持つようになります。

この過程がとても自然でした。

仕事というものは、始める前からその世界のすべてに興味を持っている必要はないのかもしれません。

仕事をする。

知らないことに出会う。

少し調べてみる。

分かることが増える。

すると、それまで見えていなかったものが見えるようになる。

杏子を見ていると、そんな仕事のおもしろさも感じます。

最初は消極的な理由で選んだアルバイトだったとしても、そこで真剣に仕事をしていけば、新しい世界が広がっていく。

『和菓子のアン』は和菓子をテーマにした作品ですが、一人の若者が「働くこと」を通して自分の世界を広げていく物語でもあるように思いました。

魅力的な「みつ屋」の人たち

杏子の成長に大きく関わっているのが、「みつ屋」で一緒に働く人たちです。

個性的な登場人物がそろっていますが、それぞれが和菓子や接客についての知識や考えを持っています。

杏子は、そんな人たちとの会話を通して多くのことを学んでいきます。

ただ知識を教えてもらうだけではありません。

お客さんとのやり取りを見たり、自分で接客したり、時には失敗したりしながら経験を積んでいきます。

職場で人が成長するためには、仕事そのものだけでなく、一緒に働く人の存在も大きいものです。

分からないことを聞ける人がいる。

自分より経験のある人の仕事を見ることができる。

そうした環境の中で、杏子は少しずつ変わっていきます。

最初の頃とシリーズを通して成長していった杏子を比べると、その変化がよく分かります。

一気に別人のようになるわけではありません。

少しずつ知識が増え、考えることが増え、自分なりの答えを見つけていく。

そのゆっくりとした成長が、このシリーズの魅力だと思います。

日常の小さな出来事が「謎」になる

『和菓子のアン』は、日常ミステリーとして紹介されることの多い作品です。

ただし、ミステリーといっても殺人事件や大きな犯罪が起こるわけではありません。

「なぜ、この人はこんな注文をしたのだろう」

「この言葉にはどんな意味があるのだろう」

そんな、普段の生活の中でも起こりそうな出来事が物語の中心になります。

考えてみれば、私たちの日常にも小さな謎はたくさんあります。

誰かが何気なく話した一言。

普段とは違う行動。

ちょっと変わった買い物。

普通ならそのまま通り過ぎてしまうような出来事でも、その背景にはその人なりの事情があります。

この作品では、そうした小さな違和感を和菓子の知識などから読み解いていきます。

事件そのものは「ありふれたこと」なのですが、それがおもしろい。

派手な展開がなくても、日常の中には物語があるのだと感じました。

とにかく和菓子が食べたくなる

そして、餡子好きの私にとって、この作品の大きな魅力だったのが和菓子の描写です。

物語にはさまざまな和菓子が登場します。

特に気になったのが生菓子です。

和菓子は味だけではなく、見た目にも季節を表現する食べ物です。

花や葉、雪、月など、季節の風景を小さな菓子の中に表現する。

普段、和菓子を食べる時にはそこまで深く考えていませんでしたが、この作品を聴いていると、

「和菓子は食べるだけではなく、見るものでもあるのだな」

と感じます。

ただ、Audibleには一つ困ったところがあります。

当然ながら、音声なので和菓子の姿を見ることができません。

作品の中でおいしそうな和菓子が紹介されるたびに、

「これはどんな見た目なんだろう?」

と気になります。

そして実際に見てみたくなる。

さらに、

「一度食べてみたい」

となります。

これはある意味、Audibleで『和菓子のアン』を聴くからこその楽しみ方なのかもしれません。

耳から入ってきた説明をもとに、自分で和菓子の姿を想像する。

そして気になったものを後から調べる。

そんな楽しみもありました。

和菓子と日本の季節

作品を通して印象に残ったのが、和菓子と季節との深いつながりです。

日本には四季があり、昔から季節ごとの行事があります。

春には春の和菓子。

夏には夏の和菓子。

秋、冬にも、それぞれの季節を表現した和菓子があります。

同じ餡を使った菓子でも、形や名前によって季節を感じさせる。

これは洋菓子とはまた違った和菓子ならではの世界だと思います。

また、和菓子の名前にも意味があります。

名前を聞いただけでは分からなくても、その由来を知ると風景が浮かんでくる。

作品を聴きながら、

「和菓子には、こんなにいろいろな意味が込められているのか」

と何度も思いました。

今まで何気なく食べていた和菓子を見る目が少し変わった気がします。

次に和菓子屋へ行った時には、味だけではなく名前や形、季節との関係にも注目してみたいと思います。

『アンと青春』『アンと愛情』も続けてAudibleで

『和菓子のアン』を聴き終えた後、そのままシリーズ作品の『アンと青春』『アンと愛情』もAudibleで聴きました。

一作目だけでも楽しめる作品ですが、個人的にはシリーズを続けて聴くことで、よりおもしろく感じました。

その理由は、やはり杏子の成長です。

最初は将来について明確な目標を持っていなかった杏子。

そんな彼女が和菓子の世界を知り、人と出会い、さまざまな経験をすることで少しずつ変化していきます。

仕事に対する考え方。

和菓子に対する興味。

人との付き合い方。

そして自分自身について。

シリーズを続けて聴くことで、その変化を追いかけることができます。

『和菓子のアン』を聴いて杏子や「みつ屋」の人たちを好きになった人なら、その後の作品も続けて聴きたくなるのではないでしょうか。

私自身も、一作目を聴き始めた時にはシリーズを続けて聴くつもりまではありませんでした。

しかし、気がつけば『アンと青春』『アンと愛情』まで進んでいました。

それだけ、この作品の世界に居心地のよさを感じたのだと思います。

Audibleと相性のよい作品

『和菓子のアン』はAudibleとも相性がよい作品だと感じました。

派手なアクションがあるわけではなく、会話や日常の出来事を中心に物語が進みます。

そのため、音声でじっくりと物語を追うことができます。

一方で、先ほども書いたように和菓子の姿が見えないという点があります。

でも、それが逆に想像力を刺激してくれます。

「こんな感じの和菓子かな」

と想像しながら聴く。

そして本当に気になれば調べてみる。

耳で物語を楽しみながら、和菓子そのものにも興味が広がっていきました。

京都や金沢へ行ってみたくなる

このシリーズを聴いて、もう一つ感じたことがあります。

「和菓子の本場へ行ってみたい」

ということです。

特に気になったのが京都と金沢です。

どちらも和菓子文化が根付いている土地として知られています。

これまでも京都や金沢には観光地として興味がありましたが、『和菓子のアン』シリーズを聴いたことで、違う視点から訪ねてみたくなりました。

有名な観光地を巡るだけではなく、老舗の和菓子屋を訪ねる。

季節の生菓子を選ぶ。

店員さんに菓子の名前や由来を聞いてみる。

そして抹茶と一緒に味わう。

そんな旅もおもしろそうです。

作品をきっかけに、実際の場所へ行ってみたくなる。

小説の楽しみ方の一つだと思います。

もし京都や金沢を訪れる機会があれば、今度は観光だけではなく「和菓子」を目的の一つにして歩いてみたいと思います。

まとめ|和菓子を食べる楽しみが一つ増えた

坂木司さんの『和菓子のアン』は、デパ地下の和菓子屋「みつ屋」を舞台に、主人公・梅本杏子が少しずつ成長していく物語でした。

最初は進学にも就職にも積極的になれず、明確な目標を持っていなかった杏子。

そんな彼女が、アルバイトをきっかけに和菓子の世界を知り、人と出会い、経験を積みながら変わっていきます。

何となく始めたことでも、続けていく中で興味が生まれることがある。

興味を持てば、もっと知りたくなる。

知識が増えれば、今まで見えなかったものが見えてくる。

杏子の成長を追いながら、そんなことを感じました。

また、日常の中で起こる小さな出来事を扱ったミステリーも、この作品の魅力です。

大事件ではないからこそ身近に感じられ、「こんなことは実際にもありそうだな」と思いながら楽しむことができました。

そして餡子好きとしては、やはり作中に登場する和菓子が気になります。

どんな味なのか。

どんな形なのか。

どんな色をしているのか。

Audibleで聴いていると見えないからこそ、余計に想像が膨らみました。

『和菓子のアン』から『アンと青春』、そして『アンと愛情』へ。

シリーズを続けて聴くことで、杏子の成長だけでなく、自分自身の和菓子への興味も少しずつ深くなっていったように思います。

これから和菓子屋に立ち寄った時には、以前とは少し違った見方をすることになりそうです。

ただ「おいしそうだから買う」のではなく、名前を見て、形を見て、季節を感じてみる。

そしていつか京都や金沢を訪れ、実際にその土地の和菓子を味わってみたい。

一冊の物語から、食べ物や文化、さらには旅へと興味が広がっていく。

『和菓子のアン』は、そんな楽しみを与えてくれる作品でした。

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