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Audibleで『ハヤブサ消防団 森へつづく道』を聴きました。

audible感想

『ハヤブサ消防団』といえば、池井戸潤さんの作品の中でも少し異色の雰囲気を持った物語です。企業や銀行を舞台にした作品とは違い、自然豊かな田舎町と消防団を中心に物語が展開していきます。

前作はテレビドラマ化され、私も毎週楽しみに観ていました。

その『ハヤブサ消防団』の2作目となるのが、今回Audibleで聴いた『ハヤブサ消防団 森へつづく道』です。

テレビドラマを観ていたこともあり、続編が出たと知ったときから気になっていました。

実際に聴き始めると、頭の中に浮かんでくるのはテレビドラマで観たハヤブサ地区の風景や消防団のメンバーたち。

登場人物の声や表情までテレビドラマのキャストを思い浮かべながら、Audibleで物語を追っていきました。

そして今回も、のどかな田舎町を舞台にしながら、物語は決してのんびりとは進みません。

女性の水死体、町長選挙、盗作疑惑、町長をめぐる不正疑惑……。

次から次へと出来事が起こり、気がつけば物語の中にすっかり引き込まれていました。

再びハヤブサの世界へ

前作『ハヤブサ消防団』では、主人公の三馬太郎が都会からハヤブサ地区へ移り住み、地元の消防団に入るところから物語が始まりました。

小説家である太郎と、個性的な消防団のメンバーたち。

都会とは違う田舎ならではの人間関係が描かれる一方で、次第に不穏な出来事が起こり始めます。

テレビドラマでは、美しい田園風景とミステリーが組み合わされた独特の雰囲気が印象に残っています。

そんなハヤブサの世界に、もう一度戻ることができる。

続編を聴き始めたときには、そんな懐かしさも感じました。

前作を知っているからこそ、消防団のメンバーが登場するたびに、

「そうそう、この感じだった」

と思い出します。

小説を「読む」のとは少し違い、Audibleの場合は耳から物語が入ってきます。

そのためなのか、以前観たテレビドラマの映像と音声が頭の中で自然につながっていくような感覚がありました。

私にとっては、テレビドラマとAudibleの両方を楽しんだからこそ味わえた面白さだったと思います。

物語は女性の水死体から始まる

『森へつづく道』の物語は、女性の水死体が発見されるという出来事から始まります。

のどかな町で突然発見された遺体。

前作の雰囲気を知っているだけに、

「また何かが始まるのだろうか」

と、最初から少し身構えてしまいました。

池井戸潤さんの作品というと、銀行や企業、組織の中で起きる問題を描いた作品を思い浮かべる人も多いでしょう。

しかし『ハヤブサ消防団』シリーズは、それらとは少し違います。

田舎町で暮らす人々の日常が描かれ、その中に少しずつ「何かがおかしい」という空気が入り込んできます。

平穏な日常のすぐ隣に、不穏な出来事が存在している。

この雰囲気が、ハヤブサ消防団シリーズの魅力なのかもしれません。

今回も、最初の水死体の発見をきっかけに、さまざまな出来事が動き始めます。

消防団長が町長選挙へ

続いて物語の大きなテーマとなるのが町長選挙です。

消防団の団長が町長選挙に立候補します。

消防団で地域のために活動してきた団長だけに、どのような選挙になるのだろうと期待しながら聴いていました。

ところが、その願いは叶いません。

選挙で勝利したのは、八百万町の名士の子息であり、IT企業の社長でもある人物でした。

ここから物語には「地方政治」という新しい要素が加わってきます。

田舎町というと、人間関係が近く、どこか穏やかなイメージがあります。

しかし人と人との距離が近いからこそ、昔から続く関係や地元の有力者とのつながりなど、都会とは違った複雑さもあるのでしょう。

町長選挙を通じて、そんな地域社会の一面も描かれていきます。

単純に「誰が町長になるのか」という話だけでは終わりません。

選挙が終わったあとも、新しい町長をめぐって物語は動き続けます。

三馬太郎の小説家としての物語

一方、主人公の三馬太郎にも大きな変化があります。

小説家としての活動が順調に進み、作品が「蛍文社文学新人賞」にノミネートされます。

前作から太郎を知っていると、小説家として評価されていく姿には少しうれしさも感じます。

ところが、ここでも物語は順調には進みません。

文学賞をめぐって、ライバルとなる北原未南が登場します。

ハヤブサ地区で起きている出来事だけでなく、小説家としての太郎の世界にも新しい人物が現れ、緊張感が生まれていきます。

そして浮上するのが「盗作疑惑」。

小説家にとって、盗作という言葉ほど重いものはないのではないでしょうか。

作品を書くことを仕事にしている人にとって、自分の作品が誰かの作品を盗んだものではないかと疑われることは、作家としての存在そのものを問われる問題です。

このあたりから、物語はますます複雑になっていきます。

地方の町で起きている出来事と、文学の世界で起きている出来事。

一見すると別々に見える話が同時に進んでいくため、

「これはどこにつながっていくのだろう」

と考えながら聴くことになりました。

次々に起こる事件

水死体の発見。

町長選挙。

文学新人賞。

盗作疑惑。

さらに、新しく町長になった人物をめぐる不正疑惑。

物語が進むにつれて、本当に次から次へと問題が起きていきます。

一つの出来事が落ち着くかと思えば、また別の問題が出てくる。

そのためAudibleを途中で止めるタイミングが難しくなってきます。

「この先はどうなるのだろう」

という気持ちが続き、自然と再生時間が伸びていきました。

池井戸潤さんの作品には、読者や聴き手を先へ先へと進ませる力があると感じます。

大きな事件だけで引っ張るのではなく、登場人物同士の関係やちょっとした違和感を積み重ねながら物語を動かしていく。

今回も、その展開にすっかり乗せられてしまいました。

テレビドラマのキャストを思い浮かべながら聴く

今回のAudibleで特に面白かったのが、テレビドラマの記憶がかなり強く残っていたことです。

Audibleを聴いているのに、頭の中ではテレビドラマの映像が流れているような感覚になりました。

三馬太郎が登場すると、自然とテレビドラマの太郎の姿が浮かびます。

消防団のメンバーが集まって話をしている場面では、それぞれのキャストの顔や雰囲気まで思い出します。

原作を先に読んでから映像作品を観ると、

「自分が想像していた人物とは少し違う」

と感じることがあります。

今回はその逆でした。

すでにテレビドラマで登場人物のイメージができあがっているため、そのキャストを頭の中に配置しながら新しい物語を聴いていくことになります。

これはこれで面白い体験でした。

テレビドラマの「続編」を頭の中で観ているような感覚と言ってもいいかもしれません。

もちろんAudibleなので実際の映像はありません。

それでも声で語られる場面を聞きながら、ハヤブサの風景や登場人物を自分なりに映像化していく。

映像作品を観たあとに原作シリーズをAudibleで楽しむという方法も、なかなかいいものだと思いました。

池井戸潤さんらしい「現代」を描く物語

『森へつづく道』を聴いていて感じたのは、ミステリーとしての面白さだけではありません。

物語の中には、現在の社会が抱えているさまざまな問題が盛り込まれています。

地方の町が抱える課題。

選挙や政治。

地元の有力者との関係。

IT企業。

そして小説の盗作問題。

どれも私たちの社会と無関係ではありません。

池井戸潤さんの作品は、物語として楽しませながら、その背景にある社会や組織の問題を考えさせるところが魅力だと思っています。

銀行を舞台にすれば金融の世界。

企業を舞台にすれば会社組織や経営の問題。

そして今回は、地方の町を舞台にしながら、政治や地域社会、情報社会などの問題が浮かび上がってきます。

だから単なるミステリーとして終わらないのでしょう。

「犯人は誰なのか」

「この事件はどうなるのか」

という興味で物語を追いながら、その裏側にある社会の仕組みについても考えさせられます。

田舎だからこその人間関係

ハヤブサ消防団シリーズの魅力の一つは、地域社会の人間関係だと思います。

消防団という組織そのものが、地域とのつながりが非常に強い存在です。

仕事だけでつながっている会社とは違います。

同じ地域に住み、日常生活を送り、地域の行事などでも顔を合わせる。

その中で消防団の活動も行う。

人間関係が濃いからこそ、助け合う場面もあれば、簡単には割り切れない場面もあります。

今回の町長選挙も、そうした地域社会のつながりと無関係ではありません。

誰が誰を支持するのか。

昔からの付き合いはどうなのか。

地元の名士がどのような影響力を持っているのか。

都会の選挙とはまた違った空気があります。

私は地方で暮らしていることもあり、こうした地域の人間関係にはどこか身近なものも感じます。

もちろん小説の世界なので、そのまま現実と重ねることはできません。

それでも「こういう人間関係は分かる気がする」と感じる部分があり、それもこの作品に引き込まれた理由の一つでした。

Audibleだから楽しめた物語の世界

普段の通勤時間などにAudibleを利用している私にとって、長編小説を耳で楽しめるのはありがたいものです。

本を読むには、どうしても本を開く時間が必要になります。

一方、Audibleなら移動時間をそのまま読書ならぬ「聴書」の時間にできます。

今回の『森へつづく道』のように展開が次々と変わっていく作品は、Audibleとの相性も良いと感じました。

物語が動き続けるので、耳だけで聴いていても比較的集中しやすい。

そしてテレビドラマを観ていたことで、登場人物や舞台のイメージがすでに頭の中にあります。

声を聞くだけで自然と場面が浮かび、まるで音声ドラマを楽しんでいるような時間になりました。

前作を知っているからこその面白さ

もちろん『森へつづく道』だけでも物語として楽しめる部分はありますが、個人的には前作『ハヤブサ消防団』を知ってから楽しむほうが、この作品の魅力をより感じられると思います。

三馬太郎がどのようにハヤブサへやって来たのか。

なぜ消防団に入っているのか。

消防団のメンバーとはどのような関係なのか。

こうした背景を知っていることで、登場人物たちのやり取りにも親しみを感じます。

私の場合はさらにテレビドラマを観ていたため、「懐かしい登場人物たちに再会した」という感覚もありました。

前作を知っている人にとっては、ハヤブサのその後を知る楽しみ。

テレビドラマを観ていた人にとっては、キャストを思い浮かべながら新しい物語を想像する楽しみ。

そして池井戸潤さんの作品が好きな人にとっては、現代社会の問題を巧みに物語へ組み込んでいく展開を楽しめる作品だと思います。

まとめ|再びハヤブサの世界に引き込まれた

Audibleで聴いた『ハヤブサ消防団 森へつづく道』。

テレビドラマで親しんだハヤブサの世界へ、もう一度戻ることができた作品でした。

女性の水死体から始まり、町長選挙、文学新人賞、盗作疑惑、そして町長の不正疑惑へ。

一つの物語の中で次々と出来事が起こり、

「次はどうなるのだろう」

と最後まで興味を持って聴くことができました。

特に印象に残ったのは、やはりテレビドラマのキャストを頭の中に浮かべながら物語を追ったことです。

Audibleを聴いているのに、頭の中ではテレビドラマの続編を観ているような不思議な感覚。

映像化された作品ならではの楽しみ方でした。

そして、単なる事件ものとして終わらず、地方社会や政治、企業、文学の世界など、現代のさまざまな問題を物語の中へ織り込んでいくところは、やはり池井戸潤さんらしいと感じます。

身近にありそうな問題を題材にしながら、エンターテインメントとしてしっかり楽しませてくれる。

今回もそのストーリーに、すっかり吸い込まれてしまいました。

前作『ハヤブサ消防団』を読んだ人はもちろん、テレビドラマを楽しんだ人にも興味深い続編です。

テレビドラマのキャストやハヤブサの風景を思い出しながら、耳で楽しむ新しい物語。

Audibleでじっくり楽しむのにも合った一冊でした。

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