Audible感想「ふくふく書房でお夜食を」― 心を満たす夜の物語

日記

通勤時間のお供として続けているAudible。最近は少し疲れ気味だったこともあり、何か肩の力を抜いて聴ける作品はないかと探していたところ、目に留まったのが砂川雨路さんの「ふくふく書房でお夜食を」でした。タイトルからしてどこか優しく、日常に寄り添う物語の予感がして、自然と再生ボタンを押していました。

物語の舞台は、小さな商店街にある本屋さん。昼間は普通の書店ですが、夜になると店の奥に食堂が現れるという、少し不思議で魅力的な設定です。現実にはありえないはずなのに、どこか「本当にありそう」と思わせる空気感があり、聴いているうちにその場所の匂いや温度まで感じられるようでした。

登場人物たちは、それぞれが悩みや問題を抱えています。仕事、人間関係、将来への不安など、誰にでも起こりうる日常の出来事ばかり。そんな彼らが、導かれるように夜のふくふく書房を訪れ、温かい料理を囲みながら少しずつ心をほどいていきます。大きな事件が起こるわけではないのに、気づけば次の章を聴きたくなる不思議な引力がありました。

特に印象に残ったのは、料理の描写です。お腹が空くような派手なグルメではなく、どこか懐かしさを感じる家庭的な料理が中心で、それが登場人物の心の変化と重なって描かれていました。料理を通して人と人がつながる様子は、日々の食事の大切さを改めて思い出させてくれます。忙しい日常の中で、つい「食べること」を作業のようにしてしまう自分にとって、少し立ち止まるきっかけになりました。

また、この作品の良さは、登場人物の成長が大きな変化ではなく、小さな前向きさとして描かれている点だと思います。問題がすべて解決するわけではないけれど、少しだけ心が軽くなる。そんな現実的な優しさが、この物語の温度なのかもしれません。聴き終わったあと、胸がじんわり温かくなり、ほんの少しだけ日常が明るく見えるような感覚がありました。

Audibleでの朗読も心地よく、夜の静かな時間帯にぴったりでした。派手な展開を求める方には物足りないかもしれませんが、ゆっくりとした時間の流れを味わいたい人には合っている作品だと感じます。通勤中に聴いていると、慌ただしいバス停にいても、まるで自分だけが別の静かな場所にいるような気持ちになりました。

本と食事、そして人とのつながり。どれも特別なものではなく、日常の中にあるものばかりです。それでも、少し視点を変えるだけで、こんなにも温かい物語になるのだと気づかされました。もし本当にこんな書店が近くにあったなら、仕事帰りにふらっと立ち寄ってしまいそうです。

最近は情報の多さに疲れてしまうこともありますが、そんな時こそ、こうした優しい物語に触れる時間が必要なのかもしれません。派手さはなくても、心を整えてくれる作品でした。これからも、通勤時間の小さな楽しみとして、こうした“ほんわか”した物語に出会えたらいいなと思っています。

聴き終えたあと、温かいお茶でも飲みながら、静かな夜を過ごしたくなる――そんな余韻が残る一冊でした。

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